ライティングで意識したい助詞:1文字違いが大違いの「が」と「は」

とんちんです。

 日々多くの原稿を読んでいると文中の細かいアラが見えてきます。たった1文字違うだけで、文の印象どころか意味そのものが変わってしまう。そんな「もったいない」原稿が何本もありました。
 モッタイナイ原稿を減らすために、まずは助詞に注目していきます。今回のターゲットは主語の後につづく「が」と「は」

はじめに。てにをはって何?

 そもそもてにをはってなんでしょう?大辞林(三省堂)をひいてみると……

  1. 助詞・助動詞の用法。言葉づかい
  2. 助詞のこと
  3. 話の前後関係。話のつじつま。
  4. 漢文を訓読するとき,補読しなければならない,助詞・助動詞・活用語尾・接辞などの古称。てには。

ふだんの生活では日本語の助詞を総称するコトバととらえてよさそうです。編集部では文の整合性をチェックするときに「てにをはを直しておいてー」なんてメンバーにお願いすることがあります。

ガとハでは意味が変わってくる!

 それでは、さっそく2つの助詞の違いを見ていきます。

  • 私はラーメン好きです。
  • 私はラーメン好きです。

一見同じ文に思えますが、受ける印象は大きく異なります。ガとハをそれぞれ強調してみましょう。
ガの場合は……

ラーメン好き
俺は!ラーメンが!好きだ!!

一方、ハの場合はこちら。

ラーメン好き?
ラーメンは好きですよ

「ラーメンが好き!」ほどの情熱は感じられません。

ラーメンは好きですよ(野菜は嫌いだけど……)

 このように否定の文を続けても違和感がありません。好きという気持ちから一歩引いているようにも見えます。こうした感覚を言語化するのは難しいもの。ガとハ、それぞれの特徴を探っていきます。

ガは接着剤

Ga haru
 ガの働きは接着剤。直上の名詞と下に来る名詞とをくっつけて、ひとかたまりの語・概念にします。基本構造は「〜が〜する(+名詞)」「〜が〜である(+名詞)」。役割は大きくふたつ。

1. 名詞+名詞

 ガはすぐその上の名詞と、下方の名詞とをくっつけます。

私が好きな飲み物はドクターペッパーだ

この文を数式化すると

私 + 好きな飲み物 = ドクターペッパー

 私、と好きな飲み物、はそれぞれ名詞。ガを使うことで「私が好きな飲み物」という1つの語(ときに概念)を作ります。基本構造にあてはめたら「私好きである飲み物」になりますね。

2. 現在の状況描写

 ガは現象を表現します。文法書では現象文ということも。単純な例が

花が咲いた

この文では「花が咲いているようす」を描写しています。次の文も同じ。

運命の人が見つかった!

 なんだか物足りなかった日常に、突然彩りを与えてくれる。そんな運命の人ようやく見つかったという驚きや喜びが隠しきれていません。

ふたつの例文の共通点をまとめると

  1. ガに続く語(文)は新しく気づいたことや発見、知識
  2. 対象にフォーカスするので強調にもなる

ハは切り離す

Ha cut
 

1. 主題の提示

 一方、ハは切り離します。ハの一番分かりやすい役割が主題の提示です。つまり課題提起です。◎は××だ。という文を見たら「◎は?」「××だ」という問いかけ文をイメージしましょう。
 一例を挙げると

私はとんちんです。=Q.私は?A.とんちんです

おバカな文で恐縮ですが「私は?」という問い(課題)に「とんちんです」という答えが続いています。

「明日からダイエット」と言っているあいだは痩せられないだろう。

 この文も「明日から〜あいだは」と状況を限定して課題をつくる。そのうえで「痩せられないだろう」と結論づけています。

2. 対比

 対比も理解しやすい役割のひとつ。例文を見てみましょう。

私は朝は嫌いだ。

 私はのハの答えは「嫌い」です。嫌いなのは「朝」。しかしこの文にあるのは「朝は嫌い」という情報だけ。夜が嫌いかどうかは分かりません。文中では夜が好き(嫌い)とは明言していないため、前後の文脈で述べられているのかも?と気になってきます。このように2つ並んで出てきたうちの2番目のハは、見えないところでなにかと比べているのです。

3. 限度

 ハの第三の役割は限度です。

  1. 私は8時に家を出ます。
  2. 私は8時には家を出ます。

 2番目の文では「(せめて)8時には」「8時には(出ないと遅刻しちゃう……)」というように、話し手の考える限界が見え隠れしています。

4. 再問題化

 一度確定した情報をハをつかって問題化します。


実際に見たら、美しくはなかった

 写真を見たかぎりではきれいな人だなあと思っていたのに、実際に会ってみたらイメージと違った。話者は「この人は美しいのか?」ともう一度はかりにかけています。つまり再審です。

コラム・わかりやすい文は距離が近い

 ハを使った基本の文が「AはB」。AとBの感覚が短くなるとわかりやすくなります。

私はB夫の浮気相手だったC子さんをバーでナンパしたD助さんに惹かれている。

 1つの文での登場人物が多い!っていうか長い!!めんどうくさいのは男女関係だけにしてください。

私はD助さんに惹かれている。

 この文では(課題)私は→(結論)D助さんに惹かれている。課題と結論までの距離を縮めるとこんなにもスッキリする。こうしたわかりやすい文の代表例が『枕草子』の第一段。春はあけぼの。冬はつとめて。潔いくらい一文一意ですね。

まとめ

 くっつけるガと切り離すハ。どちらも主語のあとに続く助詞ですが意味は正反対。きちんと意識して使い分けたいところです。さて、私ラーメンを食べに行きます。あなたも一息いれてくださいね。

参考文献:大野晋『日本語練習帳』(岩波新書)、森田良行『助詞・助動詞の辞典』(東京堂出版)