オウンドメディアのゆりかごから墓場までについて考える

ZINEで編集者をやっています、池田です。

これまでの経歴を簡単に説明しますと、某大手ポータルサイトでニューストピック編集者として働いた後、前職では人材ベンチャー企業で若手求職者向けオウンドメディアの編集を担当していました。

今回は、前職でオウンドメディアを立ち上げ、爆死させた一人の人間として、オウンドメディアが多産多死する昨今の状況について考えたことを色々書いていきたいと思います。

そもそもオウンドメディアって何?

オウンドメディアとは?という話については、この記事に辿り着いている時点で、既にご理解されていると思うのでこちらでは割愛します。

オウンドメディアってなぜやるの?

そもそも私たちはなぜオウンドメディアをやるのでしょうか。理由をいくつか挙げると、

・会社をアピールしたい
・製品を買って欲しい
・サービスを知ってもらいたい
・自社採用につなげたい

こんな感じでしょうか。でもそれってオウンドメディアじゃなきゃダメなのでしょうか?コンテンツマーケティングであれば、

・記事広告
・Facebook、Twitter広告
・SNS運用

などなど手法は沢山あるはずです。なぜそこまでしてオウンドメディアにこだわるのでしょう?

自分たちの言葉でコスパ良く伝えたい

ということかなと個人的には思っています。記事広告のように出稿する媒体のカラーに合わせることなく、FacebookやTwitter広告のように露出によって課金額が変わることなく、SNSのように短文故の炎上リスクを抱えることなく、自分たちの言葉でコスパよく伝えたいことを伝えられる。

こんな話をするとオウンドメディアは魔法のツールのように見えますよね。まあ実際そうじゃないことは置いておいて、私自身も、はじめる前は「すごいな!魔法かよ!」と思っていました。だからこそ、立ち上げ時は以下のような感じでトントンと進んでいきます。

「取り敢えずWordPressのサーバーを立てよう!デザインは内製でもいいし、リソースなかったら外注でもいいか。運用は社内から1人専任の担当者を選んで、記事制作も基本外注にしよう。とりあえず記事作って月間○○万PV目指そう!」

とりあえず私がいたチームはこんな感じでした。このタイミングではこれで全然問題なかったです。何も間違ってませんでした。あくまでこの時は。

はじめるのはすごく簡単

ローンチまでは大変なこともあると思います。開発にデザイン、最初に出す記事。色んなことがはじめてだから手探り状態です。正解が分からない中、ローンチという目標に向けて奔走する。忙しいという意味での「大変さ」です。

ではローンチしてからはどうでしょう?最初の1ヶ月目、スケジュール通りに記事を出しながら、記事制作を行う日々。0PVからはじまったメディアがどこまで伸びるのか。新しいメディアの誕生にインターネットの人たち(特に感度の高い人)はその記事やメディアのコンセプトに興味を持てば反応してくれるでしょうし、ひょっとしたらTwitterでバズったりはてブがいっぱい付くかもしれません。

前月には存在していなかったメディアですからもろもろの数値も1000%プラスです。もし目標としているPVに到達しないのであれば最終手段としてFacebookに投稿しましょう。「私が担当しているメディアがローンチしました」と言えば友達の数にもよりますが多少はPVが増えます。社内でひたすらクリックしてもGoogle先生の目は欺けません。1000%バレます。ですから足りないときは友達頼みです。ご祝儀いいねで稼ぎましょう。私も自分の退職ブログと引き換えに微々たるPVをゲットしました。

そして2ヶ月目、3ヶ月目。日々新しいコンテンツが生まれてはいとも簡単に消費されるインターネットにおいて、企業がはじめたオウンドメディアはどういう扱いになっていくのか。数字を確認してみると…PVもシェア数も桁が1つ…2つ…。あれ…思っていた数字と違うな?と首を傾げている人も、自分の作ったメディアがこんなはずじゃない!!と声を荒げている人も、大丈夫です。がっかりする必要はありません。

正直、そこがスタートです。

伸びないのは当たり前、それでも続ける理由

そうです。数字ってそんなものです。

企業が運営するコンプライアンスを意識したお行儀のよい記事はそんなに数字を稼げません。1ヶ月目は良かったのに…の1ヶ月目は目新しさあっての数字。今日もどこかの芸能人が結婚をして離婚し、出産する世の中で、衝動的にクリックさせるような記事を作るのは至難の業です。(バチバチにセンスが光る敏腕編集者がいれば不可能ではないのでしょうが…)

では数字が伴わない、インターネットで話題にもならない、そんな無風の記事を出し続ける意味って…?となりますよね。そうです。大事なのはその「意味」なのです。

最初にオウンドメディアをはじめようと思い立ったとき、誰になにを伝えたいと思いましたか?

遅くはありません。もう一度思い出してみてください。

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思い出すことができたら、改めてその人たち「だけ」に向けた記事を作りましょう。

数字を目の前にするとより多くの数字が欲しいと思ってしまうのは分かります。でも多くの人に読まれたいという気持ちは一旦置いておくことが大切です。オウンドメディアはあくまでオウンドメディア。インターネットにいる全ての人に読まれる必要はありません。むしろ読まれない方がいいことも沢山あります。

例を出せば採用を目的としたオウンドメディア。面白くて読みやすい記事を出したことで認知拡大につながったものの、想定していないターゲットからの応募数増加により採用担当者が疲弊するなどのデメリットもあります。読まれれば読まれるほどいいは幻想です。それはPVでご飯を食べていく一般的なWEBメディアのお話。それらと同じ土俵に上がってはいけません。私たちにヤフー砲は不要です。

ちなみに私はPVの罠に嵌り、結果的にメディアを爆死させました。

正直その時はとにかくPVさえ取れれば後からどうにでもなると思ったんです。でもぶっちゃけどうにもならなかった。PVは取れていたものの、それがどう事業に貢献しているかを周囲に示せなかったです。それどころかもはやPVが取れる記事を作ることが目的になっていて、気付けば私が担当していたオウンドメディアは事業貢献しているかどうかすら怪しかった。むしろ読まれることだけを考えすぎた結果、貢献どころか足を引っ張っている可能性すらあり、知らず知らずのうちに閉鎖への道をひたすら爆走していました。悲しくも忘れられない思い出です。

じゃあ何を指標にすればいいの問題との戦い

ではPVを追わないとなると何を指標にすればいいのかという議論になりますが、指標については圧倒的正解がないのが実情です。

だからこそPVなどの数値が気になってしまうわけですが、数値を目標に置くのはかなりリスキーだと思っています。ただそれは数値を見るなと言っているわけではありません。見過ぎるなということです。

何が言いたいかというと、数値を目標に置くことで本来伝えるべきことがブレる可能性が高くなります。特にPVやシェア数など、記事へのアクションに関する数字を目標に置くことは、小手先のテクニックを使った解決に走らせます。

例えば記事タイトルをいつもより釣ってみたり、SNSで何度も何度も投稿してみたり。今!この記事を!見て!!!と過剰にアピールすることは目先の数字を得ることと引き換えに将来的に得られるであろう報酬を先細りさせてしまいます。

せっかっく築いた信用やブランディングを一瞬で損なう危険性があるので、もしどうしても数値目標を置く必要があれば、記事本数や記事を読んで態度変容した人数などにするのがベター。簡単に動かせる数字を目標にしてはいけません。(記事の本数だと月末に焦ってクソ記事量産という危険性もあるので要注意…)

数字で証明できないからこそ必要な「上層部との交渉力」

以前ある編集者の方に「絶対に潰れないオウンドメディアって何だか知ってる?」と聞かれたことがあります。私は、稼げるオウンドメディアだか愛されているオウンドメディアみたいな回答をしました。ですが答えはそのどちらでもなく「社長が作ったオウンドメディア」でした。

その方は外部編集としてとあるオウンドメディアの運用を担当しており、メディアは会社としても価値があると判断されていたそうなのです。ですがある日、社長の鶴の一声で閉鎖になってしまったんだとか。オウンドメディアはあくまでオウンドメディア。偉い人の意向次第でどうにでもできてしまうのです。裏を返せばどれだけ赤字を吐き出そうとどれだけ意味のない記事を出していても、社長がOKならOKなのです。全ては偉い人次第。

圧倒的指標が存在しない以上、オウンドメディアの継続は良くも悪くも上層部を説得できるかに全てかかっています。どれだけ質の高い記事を公開しようと固定読者がいようと、究極的にはお金を出している意思決定者を納得させること以外に方法はありません。

だからぶっちゃけオウンドメディアの継続は「自分が偉くなる」が手っ取り早いです。

社内で地位があれば数値という説得材料がなくても話を聞いてもらえますし、ある程度の期間は足止めも可能。もし自分が担当者レベルであれば、オウンドメディアの施策を推進する上司が上層部であれば問題ないでしょうし、上層部でなければ組織次第です。コンテンツを使った施策に理解があるかないかでは天地の差。もう祈るしかありません。理解がなければ修羅の道。ハードモードですがその分スキルが身につくと思って割り切るのも悪くはないです。

その際に必要不可欠なスキルが「上層部との交渉力」です。

オウンドメディアはお金がかかるのにお金を生みません。「それでもやるべき理由ってなんですか?意味あります?」マーケティングとは関係ない部署の偉い人たちが厳しく切り込んでくることは必至。その人たちからすれば立派なコストなので、彼らをどう丸め込むかが重要です。正直なところオウンドメディアが成功したって事業が成長するかなんて分かりませんし、逆もまたしかり。オウンドメディアがどうだからこうと、正確なことは断言できないのです。だからこそ上層部を上手く説得し、気持ちよく予算を捻出してもらう力もまた重要なのです。私にはそれができませんでした。

ゾンビ系オウンドメディアと化したら前向きな閉鎖を

では上層部を上手く説得できて記事を出し続けることができればそれで良いかというとそういうわけでもありません。

また話を戻してしまうのですが結局は「誰に何を届けるか」。その目的が果たされているかが全てです。

ですからどれだけ社内から認められていても、記事制作の体制ができていても、そのオウンドメディアが読んで欲しい人達から求められていなければ全くの無意味。もはやゾンビです。前向きに閉鎖を検討しましょう。どうしても続けたいならリニューアルでしょうか。ゾンビ系オウンドメディアはヒト・モノ・カネ、全てを無駄にしています。閉鎖は決して悪いことではありません。むしろダラダラと続けるこの方が圧倒的に悪。もう無理だと思ったら手を引く勇気も必要です。

閉鎖、そして…

残念ながらメディアを続けられなかった。閉鎖することになった。いいじゃないですか。死ぬわけじゃありません。サイトは爆死しましたが私も生きてます。むしろ学んだことも沢山ありました。記事が拡散しなかった、読まれなかった、態度変容に繋がらなかった。そもそも良い記事を作れなかった、ライターさんを確保できなかった。お金がなくなった、上層部を巻き込めなかった。こうやって反省点が見つかったわけです。もはやそれだけで大収穫。HRナビのように伝わりきったから閉鎖なんてほぼ100%ありえないですよ。オウンドメディアに大往生なんてありません!だから、閉鎖したということは、思い通りの結果にはならなかったけど、やれることはやったという訳です。

あくまで大切なのは、次どうするか。

またオウンドメディアをやるのか。もうやらないのか。

本当に重要なのは、閉鎖後の次の一歩目ではないかと、個人的には思っています。